賃貸経営の6つのリスクと対策 【前編】(子供の不労所得として考える) VOL.063

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不動産の賃貸経営をする前にリスクを知る

最近流行りの築古戸建て物件の賃貸についての記事です。

自分の息子の将来の不労所得にでもなればと考えて一級建築士の自分が調べて見たこと、注意した方がよいことをまとめてみました。

2024年に相続登記が義務化

2024年に相続登記が義務化されます。

義務化されると、相続権利者が相続登記をしない場合、10万円の罰金が課されます。

相続をした場合、土地にかかる税金(固定資産税、都市計画税)が毎年課税されるようになります。
それを回避するため恐らく2024年前後から不動産の売り物件が増えると予想できます。
物件は少ないより多い方が良い。

2024年前後を目標に長期的に物件を購入し賃貸経営をしてみようと考えています。

どんなリスクがあるかをまとめてみました。

築年数の古い一戸建て住宅の賃貸

SNSで調べると、築年数の古い住宅を低価格(1,000万円以下)で購入し、改修して賃貸として貸し出している方がチラホラ見えます。

儲かってます的なものはよく見るけど、ほんまかいな~

1,000万円以下の物件を調べてみた

実際に、不動産検索サイト(ニフティ不動産、at homeなど)で調べて、現地でどんな物件が多いのか調べてみました。
3か月12棟を現地調査。
100万人程度の市から50Km圏内で調査。

事例1 1975年建築 木造 2階建て 120㎡
  • 違法な増築部がある
  • 白蟻被害がある
  • 違法な増築部とのつなぎ目で雨漏り
事例2 1970年建築 木造 2階建て 90㎡
  • 適法に建てられたか不明
  • 致命的な雨漏り梁が腐ってる
  • 排水経路不明
事例3 1980年建築 木造 2階建て 100㎡
  • 適法に建てられたか不明
  • 床、水回りの柱がかなり腐ってる
  • 崖に擁壁が無い(崩れたら命の危険)

いや~安いものには訳がある。他の物件も何かしらあるか辺境の土地で想定賃料が5万円以下となり赤字でパス。500万円以下で購入しないと厳しいけど、大きな粗大ごみ状態。

現地調査の結果全滅でした

残念ながら購入できそうな物件はありませんでした。

しかし中には買ってしまえば運用して収入を得ることができる物件はありました。
ただ一級建築士としてある程度の建築の知識がある自分からすると、とても安心して賃貸に回せない物件ばかり。自己破産の恐れもあるリスクの高いものをわざわざ購入しません。

ある意味、知らない人は最強かもしれません。こういった物件を結構買っていく方が多い。
でもこのような物件はある程度の期間、所有して賃貸するには相当なリスクがあります。

参考ですが、戸建ての年間維持費はざっくり30万円~40万円程度+管理委託費。

一般の方ではわからないリスクが多い

知識があっても、天井裏、床下など見えない部分はわかりません。点検口があったり、天井のシミや基礎周りのヒビの入り方、増築部分の状況、バルコニーの防水状況をチェックして確認したものだけでも結構な管理状態のものばかりです。

一見すると修繕して賃貸に回せそうなものは1、2件はありましたが、よく調べると雨漏りによる腐食部分を発見、改修時に追加の高額工事費用が必要となる可能性が高いため購入を見送りました。腐食部分はアットホームやスーモと言ったサイトでは公開されていませんし、仲介業者からは当然話もありません。だから買ってしまう方が多いのかもしれません。

この物件は別の方が購入されたことを後で知ったんですが、なかなか勇気があります・・・

結果:建築・不動産に素人な方がハイリスクを知ってか知らずかで賃貸運用をしていた

ほとんどの人が無保険で車を運転しないのに・・・築古は保険が出ないのに運転してる

SNSで見かけてコメント

買っちゃたけど、あの物件が倒れたらどうしよ~

胃が痛くなりそうです。

本当に儲かるならプロがやる

なぜ大手事業者が業として自らやらないか理由は簡単です。


下のリスク一覧にも書きましたが、
効率よく利益が出ない。ハイリスク。
リスクの高い面倒な物件は素人に売っぱらってしまえ。
という全体的な構図が見えてきます。

仲介する側は本来売れないようなボロ屋が売れて仲介手数料が入るため損はありません。
あくまで仲介者のため彼らのリスクは低くなります。

詳しくない人たちは大きなリスクがあることを知らずに購入しているかもしれません。

個人で築古物件の賃貸をしている人たち

  • 時間が凄くあって自分でDIYできる人
  • ハイリスクを調べてない人
  • ハイリスクを少し知ってあえてしている人

こんな方が多い印象です。

これとは別に多額の資金を所有して好立地の築浅マンションなどを1棟買いをする人もいるようです。その方たちは築古の戸建て物件は見向きもしない印象です。

築古はトラブルも多いしね~

築古物件の購入リスク一覧

  1. 建物が倒壊する
  2. 赤字になってしまう
  3. 賃貸需要のない土地を買う
  4. 建替えできない土地を買う
  5. 建替時に制約がある土地を買う
  6. 業者に騙される

リスクを1つずつチェック

1.建物が倒壊するリスク

前回の記事で少しだけ紹介しましたが、賃貸物件が倒壊するとかなりのハイリスクです。築古建築物は特に危険かもしれません。ここを無視するのはギャンブル性が高くなります。

今回はリスクについてを深堀りします。

地震で居住者が死んでしまったら?

結論としては、オーナーが損害賠償請求を受けるかもしれません

阪神大震災の判例で、3階建ての賃貸マンション(1964年築)の1階が潰れて、居住者の家族が死亡してしてしまった。建物は建築当時の構造基準を満たしておらず、マンションオーナーに1憶円以上の賠償命令が出ています。

1999年9月20日 神戸地裁判決

上記の判例を見ても、危険なことがわかります。
建築当時の基準を守っていれば大丈夫という意見も残っています。しかし昔は今と違いかなりいい加減でした。図面と柱の位置が違うこともあれば、鉄筋も不足していることもあります。そもそも完了検査を受けていない物件も沢山ある中で当時の基準を守っている担保は無いに等しいと思っておくべきでしょう。

※保険でカバーできない部分がかなり多い

地震保険は古い建物でも少し割高ですが加入可能です。しかし建物の補償で人への補償ではありません。
火災保険老朽化に対する損害は保証対象外です。
施設賠償責任保険老朽化、自然災害が対象外となります。
シロアリも既存住宅瑕疵担保保険の特約でありますが、築古は条件にあわず基本的に加入できません
築古の弱点を保険でカバー出来ない事を知っておくべきです。

施設賠償保険入っているから無敵っす!!

老朽化や自然災害はほとんどカバーできません

ボロボロの建物で成り立つ保険は基本的にありません。

対策として人が死なない(安全な)建物にする必要があります。

その他にも判例があり、それも含めて大きなポイントは以下の通り。

  1. 建築時の建築基準法を守っているか
  2. 一定の地震に対して安全であるか
  3. 雨漏りで柱などが腐って無いか、白蟻の被害がないか
  4. 崖に対して安全対策があるか
上記の具体的な対策
  1. 建築基準法の検査済証があるか
  2. 1981年(昭和56年)6月1日以降に建てられているか
  3. 売り主に雨漏りなどがないか聞き取り調査、現地確認
  4. ひび割れの無い擁壁でがけを保護しているか

1. 建築基準法の検査済証

1の検査済証は古い建物ほどないことが多いです。売り主側が紛失していいても、過去に検査済証や確認済証を取得している場合は行政庁の台帳に記載があれば【台帳記載事項証明書】として検査済証等に代わるものとして請求が可能です。台帳に記載もない場合は適法な手続きを得ていない可能性があります。法的に担保するものが無い建物となります。

地震で倒れない自信があるなら・・・

2. 1981年(昭和56年)6月1日以降に建てられているか

2の建築年は俗に言う新耐震基準以上であるかどうかです。一定の地震に対して安全かどうかの判断は震度5以上の地震に対して倒壊しないかどうかが判例上の判断ポイントになるので最低限1981年(昭和56年)6月1日以降であるかどうかを確認します。現地調査時に建物に傾きが無いかの調査も大切です。※1981年6月1日以前の建物でも耐震改修などにより対策が可能な場合があります。

築古物件として出ているのは、1970年以前の木造住宅もかなり出ています。
適切な管理がされて売りに出ているのはほとんどありません。

地震で倒れない自信があるなら・・・

3. 雨漏り、白蟻被害、柱梁が腐ってないか、建物が傾いてないかを確認

3の雨漏りや白蟻被害は売り主側に聞き取り調査をしましょう。
しかし売り主側が把握していないことも多いです。現地調査をしても一般の方や壁をはがさないと実際にはわかりません。

瑕疵担保責任について免責がないかをチェック


そこで家を売買する時の予定契約書の中に売主の瑕疵担保責任の条項が記載されているかを確認しましょう。これは物件に隠れた瑕疵、つまり売主より聞いていなかった雨漏れ・白蟻の被害、構造部が腐っていたり、一定以上の建物の傾きや、設備の故障などがあった場合、引渡し後定めた期間のみ売主が保証するという条項です。期間は多くの場合は売買締結後6か月と割と短いので注意が必要です。
また瑕疵担保免責有(瑕疵担保特約付)という物件はその部分が免責されて販売しています。逆を言えば必ず何かあります。その何かを売り主側に聞いて、特に雨漏り、白蟻被害、建物の傾きの場合は購入の検討は控えたほうが良いでしょう。基本的には一般の方にはかなりのハイリスクです。
仮に瑕疵担保免責が無くても、築50年などの物件は損害があっても請求額が少なくなるリスクもあります。

腐っても倒れない自信があるなら・・・

4. ひび割れがない擁壁で崖を保護しているか

4の崖に対してひび割れの無いコンクリートや整形されたコンクリートブロックではない四角い石(間知石)が積まれていれば一定の安全性があると言っていいかもしれません。
低価格の物件は、ひび割れて危険な擁壁であったり、コンクリートブロックが高く積まれていたり、それらが2段(擁壁の上に土留めのコンクリートブロック)に積まれていたり崩壊する恐れがある状態で販売されています。

危険な擁壁の事例

崖や擁壁が崩れた場合は基本的に所有者の責任

神奈川県逗子市がけ崩れ(2020:死者1名)

2020年に神奈川県逗子市で擁壁が風化劣化により崩壊し、巻き込まれた方が亡くなられています。このケースは建物所有者に民法により管理責任が基本的にあるため遺族が訴訟を起こした場合は高い確率で敗訴することが想定できます。賠償額が1億円を超えたり、擁壁の復旧にかかる費用が数千万円以上かかることもあります。

国土交通省資料より引用
静岡県熱海市がけ崩れ(2021:死者25名以上)

大雨で大規模な土石流が発生し死者が25名以上。
前所有者が刑事告訴(業務上過失致死)
現所有者も刑事告訴(重過失致死)

いずれも民事でも告訴されるとなると想像を超える多額の賠償額となる可能性があります。
土地を適法に安全に維持しなければなりません。管理責任は非常に重いものです。

施設賠償責任保険

よくこの保険があるから築古物件も全然問題ありません。というような意見もWEB上にあります。実際は大いに問題があり、そもそもこの保険は災害は除かれるため地震や洪水があった場合、保険の支払い対象から外れます。

がけ崩れが起きない自信があるなら・・・

リスクは知って、その上でどうするか判断したい。
ただ世の中に出ている木造の賃貸物件は割と旧耐震基準も多かったりしますね。

2.赤字になるリスク

築古物件は、改修工事に思わぬ経費がかかることがあります。
また、賃料も低くなりがちで採算をとることが難しいことも多いです。

  • 改修で壁を剥がしたら白蟻に食われてた
  • 改修で天井を剥がしらた雨漏りで梁が腐ってた
  • 賃貸料が安い地域で利益が出なかった
  • 空き室が続いて赤字になった
  • 外国人入居者と家賃トラブル
  • ペットを飼って糞尿被害

構造躯体の改修は高額になりがち

白蟻や雨漏りで、構造躯体の改修が必要になると大きな出費を強いられることがあります。

■雨漏りで構造ごと改修で追加請求 300万円

■白蟻被害で改修ができないほどの被害が発覚など

お金をかけてまで直さなくていいのでは?

リスクが大きすぎるので分かった時点で基本的に手を出さない

築古物件は賃料が安くなることが多い

古い建物を好んで高い賃料を払って借りる人はまずいません。
自分が借りるなら新しい方が良いですよね。
その地域の安い物件相当で当初に家賃設定をする必要があります。
おしゃれな改修をすれば借り手はつくかもしれませんが、その分改修工事費がかさむことが多いです。

空き室リスク

築古物件は駅が近い、家賃が安い、お洒落にリフォームされているなどの付加価値がないと空き家になりやすい。

入居後のトラブル

築古物件の借り手は、外国人だったり、日本人でも所得が低い方が多いです。
入居後のトラブルリスクは上がります。
屋内で事件が発生したり、ペットを勝手に買って糞尿が室内にされていたり、予測しないトラブルが発生します。

更に、リフォームをしたはずでも、給湯器の故障、雨漏りなどが発生して追加費用を請求される事もあります。

3.賃貸需要の無い土地を買うリスク

地方の土地で駅から遠い、駅が近いけど空き家だらけ、こういった土地は基本的に購入しても賃貸で借り手がなかなかつきません。
購入前に、建物周りの環境をチェックすることは必須です。
低価格の物件は、このような土地に該当する確率がかなり高いです。
改修しても入居者が何か月も付かないということもあります。

次回 【建替えできない土地を買う】 からです

後編はこちら

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  1. […] […]

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