築古物件の購入リスクの一覧

築年数の古い建物はリスクが大きくなります。
出口戦略云々、利回り云々、で検討される方がほとんど。保険でカバーできない危険なものもあるのにそこは無視。車は無保険で運転しないのに不思議です。
- 建物が倒壊する
- 赤字になってしまう
- 賃貸需要のない土地を買う
- 建替えできない土地を買う
- 建替時に制約がある土地を買う
- 業者に騙される
今回は、4.建替えできない土地を買うリスクからです。
前回の記事のからの続きです。
4.建替えできない土地を買うリスク
スーモやアットホームで見かける【再建築不可】という物件です。
特徴として安いということです。
相場価格の半額以下のこともあります。
でもなかなか売れない物件です。
リスクをまとめます。
- 建物が老朽化した時に建替えができない
- なかなか売れない
- 地震や火災で建物が無くなったら対応ができない
- ローンが組みにくい
基本的には手を出さない方が無難です。
裏ワザで、建築の許可を取ったりして建替えをできる場合がごくまれにあります。
しかしそれも出来ないことがほとんどです。
どんな土地が建替えができないか?
- a 市街化調整区域内の土地
- b 土地に繋がる道路がない か 狭い
- c 抵当権が残っている土地
a 市街化調整区域内の土地
かなり制約が多くて建替えが出来ないこともある土地です。
住宅はダメだけど飲食店はOKだったり、用途によっては再建築が可能な場合があります。
しかし一般的には建築しにくい土地のため、土地を売りに出した場合は安い金額での取引となります。
建替え可能な土地は行政書士、都市計画法に詳しい建築士や不動産屋さんが取引をします。
一般の人に条件の良い物件は基本的に回ってきません。

調整区域の土地を運用する場合は都市計画法の知識が無いと苦労します
b 土地に繋がる道路がない又は狭い土地(接道がない土地)
建築をするために、敷地に接する建築基準法上の道路が必要です。
接する長さは最低2m以上です。
細長い土地は注意しましょう。
※各都道府県で建築基準条例によって、土地形状・建物用途に応じて6m以上必要としているときがあります。
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建築基準法第43条で許可を取得することも可能性としてはあります。
ただし、許可が取得できるような土地はかなり少ないものです。
さらに一般の方で賃貸運用しようと考えている方にはかなりハードルが高いと思います。
必ず建築士、行政書士と相談する必要があります。
c 抵当権付きの土地を買う

抵当権が設定されている土地を購入しても、売り主が借りたお金を返せずに銀行などに抵当権を実行されると、抵当権付きの土地・建物を買った人もその土地や建物の所有権を失ってしまいます。
売り主に借金の返済計画を確認して抵当権抹消する方法も可能性としてはあります。土地等の売買契約後に抵当権抹消をしようとする場合は、十分な事前協議が必要です。
リスクの高い物件と言えるでしょう。
5.建替時に制約が強い土地を買うリスク
賃貸運用されている方では、知らない方も多い分野です。
低価格帯の物件を12件現地調査した結果、この土地に該当したケースが11件ありました。
崖地3件、浸水地域2件、軟弱地盤4件、境界不明10件、連棟2件、汲取り便所2件、井戸1件、他白蟻雨漏り多数。(重複もあるので合計は12件を超えています)これらは現地確認とWEB上で確認が可能です。
人命に関わる土地
- a 浸水・液状化地域
- b 土砂災害危険区域
- c がけ地
建物の用途・大きさに関わる土地
- d 用途地域(工業専用地域・市街化調整区域)
- e 防火地域
- f 建蔽率容積率が小さい
- g 二項道路
- h 地区計画
余分なお金がかかる土地
- i インフラがない
- j 境界線の位置不明確
- k 周囲より低い土地
手間がかかる土地
- l 共有持ち分のある土地
- m 連棟の建物
- n 南側の敷地又は建物が高い土地
人命に関わる土地
a 浸水・液状化地域

ハザードマップポータルサイトというものが国土地理院から出されています。
重ねるハザードマップ(国)
わがまちハザードマップ(地方自治体)
洪水による浸水や地震による液状化について調べることができます。
最近は豪雨による災害、地震による液状化によって大規模災害があり、ある程度WEB上で情報を収集できるようになっています。
判例上では、大地震で液状化があった場合に、WEB上で液状化の情報が公開されていなかった時に想定を超える地震被害で液状化をしてしまっても所有者側が必ずしも責任をとらなくても良いケースがありました。(施工者側は一定の対策もしていました。)
しかし現在は公開されています。過去と異なる判例が出ることが十分想定されます。
万が一の被害で破産してしまわないように調査が必要なポイントだと思います。

一般の方だとなかなか調べにくいサイトかもしれません
b 土砂災害警戒区域
これも上記のハザードマップや各自治体のウェブサイトから調べることができます。
注意点は【土砂災害特別警戒区域:レッドゾーン】に入っている場合です。
木造では作れなかったり、コンクリートも一定の基準でないといけないなどかなり制約の強い土地です。
基本的にはレッドゾーンの範囲内は購入を避けた方が良いです。
理由は下に書いた【がけ地】と同じです。
フラット35も借りることが出来ません。
c がけ地
高低差のある土地は十分注意が必要です。
- 30°を超える傾斜がある土地
- 高さが人の高さより高い崖があるとき
- 更にそれを支える擁壁がある場合
擁壁にひび割れがないか、傾いていないか、コンクリートブロックで擁壁を作っていないか、一般の方で判断の難しい部分だと言えるでしょう。

神奈川県逗子市がけ崩れ(2020:死者1名)
2020年神奈川県逗子市でがけ崩れがあり一名の方が無くなられています。
訴訟となれば所有者の管理責任を追及され敗訴となる可能性がかなり高い内容です。
請求額は1億1,800万円、これとは別に擁壁の復旧費用。擁壁の復旧に数千万円以上。

静岡県熱海市がけ崩れ(2021:死者25名以上)
大雨でかなり大規模な土石流が発生。死者が25名以上。悲惨な事故です。
違法な造成工事をした前所有者が刑事告訴(業務上過失致死)
違法造成はしていない現所有者も刑事告訴(重過失致死)
いずれも民事でも告訴されるとなると想像を超える賠償額となる可能性があります。
土地を適法に安全に管理責任は非常に重いものです。
施設賠償責任保険
このようなリスクに対する保険として考えられるのは施設賠償責任保険です。
しかし大雨・地震などの自然災害、老朽化によると判断された場合は保険適用外となります。
保険適用となった場合でも物件ごとに応じてリスクが異なります。1億円に設定しても足りないケースもあります。
擁壁は建物本体に地震被害が無い場合は地震保険の対象外となる事があります。その場合の復旧費用は自費。当然お金の話のみで刑事罰に保険はありません。
※【保険金がもらえるか?】については記事の最後に詳細を紹介しています。
都道府県で個別にがけ条例を定めている場合があるので、購入予定地があれば調べる必要があります。
検索ボタンを押した後に都道府県を追加してください。
建物の用途・大きさに関わる土地
d 用途地域(工業専用地域・市街化調整区域・その他)
土地には、用途地域が定めれている場合があります。
地域によっては、戸建てが建てられない、10mまでしか建てらないなどの制約があります。
工業専用地域
工場系の用途は建てられます。
住宅や飲食店は建てられません。
既存のものを利用するのも基本的に不可です。
市街化調整区域
市街化を抑制する地域です。
時として住宅を建てられるケースはありますが、農家じゃないといけないとか昔から住んでいる人でないといけないとか、結構制約が多いです。
都市計画法に詳しくないと対応しきれません。
安易な購入は控えた方が良いでしょう。
第一種低層住居専用地域
住宅は建築可能です。
ただし、店舗系は建築しにくい土地です。
e 防火地域
防火に関して制約の強い土地で、一定の規模以上で耐火建築物にする必要があります。
既存が木造の場合は要注意です。
適法に建てられていない可能性があります。
建替えをする時にコストがかかります。
f 建蔽率、容積率が小さい土地
建築面積(上から建物を水平投影した面積)
床面積(実際に使う部分の面積)
※それぞれ緩和があります。カッコ内はざっくりとした説明で正確なものではありません。
建築面積が敷地面積に対して何パーセントまで建てられるかが建蔽率
床面積が敷地面積に対して何パーセントまで建てられるかが容積率
例えば 100㎡の土地で建蔽率60%の場合は、建築面積は60㎡建築可能です。
建蔽率30% 容積率50% というような土地はかなり制限がきついので通常の相場では買わない方がよいかもしれません。(建蔽率50% 容積率100% ぐらいからが一般的です)
g 二項道路に接する土地
敷地は建築基準法上の道路に2m以上接する必要があります。
その道路は建築基準法の道路である必要があります。
その中で、建築基準法第42条第2項による道路があります。
その時は注意が少し必要です。
現状の道路の幅が4mなら問題ありませんが、4m未満の場合は、自分の土地を道路として取られてしまう可能性があります。
現況の道路の幅が2mの場合、道路の中心線から2mの範囲が基本的に道路として取られてしまいます。
多くの場合が、寄付しなければいけません。中には行政庁が買い取りことがあるようですが、かなり少数派です。
h 地区計画
地区計画に入っているとほとんど制限が強化されています。
時に住宅が建てられない、店舗が建てられない、など独自の制限を定めているため注意が必要です。
余分なお金がかかる土地
i インフラがきてない
築年数が古いとこんな物件もあります。
- 水道が実は井戸水だった
- トイレがボットン便所だった

建物と道路(給排水先)に距離がある場合は、数百万円単位でかかります。
築古物件では全く採算が合わなくなることもあります。
※トイレが水栓でも古い浄化槽で【個別浄化槽】がある場合は原則【合併浄化槽】に変えないといけないため費用がかかります。(いい悪いは別にして個別浄化槽のまま賃貸運用している方も見えます)
j 境界線の位置が不明確
境界杭の位置を確認しましょう。
確認できない場合は、敷地の測量を行い、必要があれば隣地所有者も立会をして境界確定を行います。
多くの場合は、売り主側で確定測量を行うことが多いです。
しかし値引などをすると買主側で負担してくれと言ってくることもあります。
費用は敷地の大きさにもよりますが、小さな整形の土地でも40万円~というイメージです。
(当然大きな土地や複雑な地形は高額になります)
k 周囲より低い土地
低い土地は雨水が流れ込みやすく湿気が高くなります。
建替えの場合は盛土をすることで対応可能な場合もありますが、ボリュームが増えれば高額です。
また既存の建物が木造の場合などは、湿気により構造部材が腐っていることもあります。
手間がかかる土地
l 共有持ち分のある土地
これは下手をすると建替えが出来ない場合もあります。
一般の方はあまり手を出さない方が良いかもしれません。
敷地から道路までを共有持ち分として、建築基準法の道路としている場合があります。その場合も所有者が民間の場合は購入を避けた方が良いかもしれません。
m 連棟の建物

昔の長屋は1つの建物と土地に複数の所有者が存在することがあります。
建物は1つだけど横並びで3軒連なっていて、壁で区切られていることが多いです。
注意点は敷地の所有者が共有になっている場合です。購入後にやはり売り出そうとした時に非常に売りにくい物件となるでしょう。
それぞれ1軒ごとに敷地も建物も壁の位置で別々の所有者になっている場合は、それぞれの所有者の所在、連絡先が把握できるか確認しておきましょう。確認が取れれば建物を改修や解体する時に協議が済めば可能となります。
古い物件が多く耐震性が不足していることがほとんどです。自分の持ち分を改修しても、隣が改修していなければ共倒れする事があります。
n 南側の敷地又は建物が高い土地
南側の建物が高いと日当たりが悪くなります。
賃貸物件なら大きな影響が出ないことが多いです。
いずれ自信や子供の居住に転用を考えている場合は注意が必要です。
6.業者に騙されるリスク
不動産投資をする人が増えていますが、業者に騙される人も増えています。不動産にも建築にも素人で、素直で良い人、熱中しやすい人が被害者になります。常に相手を疑い、契約直前でも違和感を感じたら直ぐに断れるようでなければ不動産投資の詐欺にあうリスクがあります。
騙されるパターンは大きく2つあります。
- 不動産屋に騙される
- 改修する建築屋に騙される

テレビにも紹介されてました
不動産屋に騙される
不動産屋の中には悪徳業者がいます。彼らは営業許可も持っていますので、信用し過ぎて不動産屋に丸投げして被害にあっている方が見えます。
手口は初めの物件はこちらに利益を出させてくれます。旨味を感じさせて信頼を得ます。信じ切ったところで2件目3件目あたりから取引の金額を傘増ししてきます。当初より1000万必要。などの話が出たら要注意。副業的に片手間でやられている方ほど狙われます。
『全部うち任せてください。』『安心してください。』などの言葉を随所に使う人ほど怪しいものです。騙された後は『ぶっ殺すぞ』という言葉に変わります。

素人相手はちょろいっすね

当たり前ですが他人に全てを任せてはいけません
改修する建築屋に騙される
不動産投資をする方は工事費を出来るだけ抑えようとします。出来るだけ個人に依頼して費用を抑える方がいます。信頼出来る知人なら良いのですが、〇〇のマーケットなどで知らない個人に依頼する時は慎重さが必要です。
もちろん多くの業者が真っ当に仕事を受託します。例外もいるようです。
前払いは慎重に
工事着手前にお金を要求されたら少し注意が必要です。前金払いとして、10〜30%を支払う事があります。金額の大きな公共工事でも行われるので違法ではありませんし、しっかりとした契約書で細かく取り決めがされています。しかし築古の賃貸用リフォームでは金額が小さいため、わざわざ前払いをすることは少ないです。
契約書を交わす
騙された方は、契約書を交わさずに前払いの要求に応じて支払いをします。業者は少しだけ解体して、とりあえず着手した事にする。その後は忙しいなどと言われ放置されます。早く工事をして欲しいからと相手から残りの額の支払い要求に絶対に応じてはいけません。その時点で騙されている事が確定しています。入居者が決まって焦っている方は良いカモにされます。
建設業の許可、注文請書も活用する
工事費用が500万円を超えると建設業の許可が必要です。500万は建築の世界では低額です。許可の有無は一定の判断基準になります。もちろん許可があるから全面的に信用してはいけません。100万円前後の依頼は、正式に契約が必要です。工事請負契約書で契約しましょう。少額でも注文書・請書+契約約款で取引を行うことでトラブル防止となります。
万が一の時に保険金がもらえるか?
古い建物の賃貸経営者が増えてきています。しかし紹介したようなリスクがあり、オーナーが賠償責任で訴追されたり詐欺被害にあった事例が各種メディアで紹介され始めています。
そんなリスクの時に頼れるのが保険です。加入する可能性のある保険と特に建物によって借主がケガや死亡した場合に保険金が下りるかどうかを紹介します。
保険金の支払いの可能性
保険の種類 | 利用者のケガ 等に対して | 備考 |
---|---|---|
地震保険 | × | 建物に対しての保険 |
火災保険 | △ | 老朽化は対象外 |
施設賠償責任保険 | △ | 老朽化、雨漏り、自然災害は対象外 |
既存瑕疵担保保険 | △ | 築古は加入できないことが多い |
各種保険は原則適切に維持管理されていることが前提となります。
表からもわかるように、老朽化や災害で利用者がケガや死亡した場合に支払われる保険はほとんどありません。
適切な維持管理とは
- 最低限の地震に耐えられる強度(新耐震基準以上)を確保する
- 雨漏りがあれば当然修理を行っておく
- 構造に腐っている部分があれば直す
- 白蟻被害があれば完全に除去して損傷部分は直す
これは最低限となります。
古い物件を安く運用されているオーナーによく見られるのが、表面だけを綺麗にするパターンです。
酷いオーナーさんだと雨漏りや白蟻もみなかったふりをする方もいるようですが、上記のリスクを完全に把握していません。
外部階段の老朽化を無視して崩壊、古い擁壁が崩壊、旧耐震の建物が地震で倒壊、古い擁壁や塀が倒壊、して利用者がケガなどをした場合は全てオーナーの責任です。そして適切管理がなければ無保険の状態となります。その状態で実際に損害賠償に発展しているケースも増えています。
賃貸オーナーには借主に対する責任が非常に重くのしかかってきます。
運用にあたっては最低限保険がおりる状態はキープするべきです。
低価格帯の中古戸建ては、ご紹介した注意点に該当する物件が目白押しです。
扱うにはかなり知識が必要です。
でも実際は、そのリスクを無視する形で取引が行われています。老朽化による倒壊などは保険でカバー出来ません。地震保険も人的被害まではカバーしていません。
賃貸に提供している物件も、表面だけ綺麗にして貸していることがほとんどです。
何よりも大切なのは建物が崩れないこと、借主が安全に住めることです。

擁壁が崩れそう・・・責任が自分にあるなんて知らなかった・・・

出口戦略が大事って・・・築古に関しては出口がないものが沢山あります

FIREするぜ!!

違う意味でファイヤーするぜ・・・
逆に言えば、ここで挙げたことをチェックすればリスクは管理できるかもしれません。
現地を確認するなら
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