親が死亡した後の財産管理者と運用方法

障害のある子に対して遺言書ではやれることに限界がある
周囲に悪意のある人間が現れ資産を騙し取られる事例もある
いくつか対策となりそうな財産管理の方法を調べて見ました。
※2021.07現在で調査した制度のため利用する際の最新の情報を確認する必要があります。
信託
家族信託

- 【親】が、信頼できる知人や家族、社会福祉法人に、
【子供】のために残した親の財産を運用して
【子供】が必要な時に必要な分だけ給付する
ことをお願いしておくこと。
概要
親が信頼できる甥などの親族に財産を信託譲渡する方法。
その場合に親は【委託者】となります。
更に親は【生存中の受益者】にも設定します。
障害のある子を【死亡後の受益者】
甥を【受託者】
と設定します。
親が死亡後したあとでも親の考えのとおり、子供に対する支援などを信託によって達成させるものです。
家族ではありませんが信頼できる社会福祉法人などがあれば【受託者】とすることも可能です。
【委託者】:親
【受託者】:親族、知人、社会福祉法人など
【生存中の受益者】:親
【死亡後の受益者】:障害のある子
信託を行うと、信託した金額が甥である【受託者】に所有権が変わります。
信託した資産は独立した存在になります。
甥は資産を管理する権限を有するだけです。
自由に処分することはできません。
万が一甥が破産をしても、信託契約の資産は保護されます。
信託契約による資産と受託者の資産は分けて管理されるためです。
親が死亡すると、障害のある子が相続します。
甥は障害のある子に対して、相続した内から契約の内容に基づいて、必要な時期に必要な金額を給付することになります。
あくまで甥の立場は管理者です。
親の死後、更に障害のある子が死亡した場合、世話をした甥や団体などに承継させて財産を残すことが可能です。
この仕組みを使えば、子どもの死亡後の残りの資産は、助けてくれた甥などに残すことができます。
後継ぎ遺贈という仕組みです。
信託監督人

甥【受託者】が資産管理します。
しかし自分はこの世にいません。
どうしても心配です。
障害のある子は管理者である甥に対し的確な権利を主張できません。
その時は信託監督人を選ぶことができます。
信託監督人は、障害のある子に代わり、子の権利を行使する立場です。
甥【受託者】とは契約時に事前に調整する必要があります。
甥からしたら自分を信用してもらっていないともとれます。
誤解の無いようにするためです。
しかしこちらも結構な手数料がかかります。
年間20万円とすると30年生きた場合で600万円程度でしょうか。
信託監督人は税理士などが選ばれます。
メリット
- 生前に手続きができる
- 信託した財産は子どもが必要な時に必要な分だけ給付
- 受諾者が破産しても、信託契約の財産は別途保護される
- 遺言代用型信託は、相続税のため死亡時まで税金はかからない
- 子どもが死亡した後、残りのお金の寄付先も信託契約で決めるられる
- 信託監督人による二重の管理も可能
相続税は、贈与税に比較して基礎控除等が大きく税金を抑えられます。さらに障害者控除も加わるため、5,000万円程度の資産を相続したとても子供の年齢に応じて相続税が発生しないこともあります。
デメリット
- 甥【受託者】に財産を管理させるという負担が発生する。
- 本当に信頼ができるかどうか判断は難しい。
2014年に成年後見人制度だが親族の不正な使いこみは56億円以上という不安なデータがある。社団法人、弁護士が勝手に流用するケースもあります。 - 家族信託制度になれている弁護士や信託会社を探す必要がある。
2021時点で年数の浅い制度のため経験のある人が見つかりにくい可能性。 - 成年後見人をつけないことによって相続や福祉サービスを受ける時に支障となる場合がある。
福祉型信託
法的な定義された用語ではない。
高齢者や障害者のために信託を設定することを「福祉型信託」と呼ばれています。
定型的な信託形式があるわけではない。家族信託も含まれる。
受託者は 家族、知人、社会福祉法人などを設定できる。
信託銀行でも設定できることがあるが管理料や手数料は必要。
信託の契約書作成の依頼先はあまり多くありませんが以下の協会でサポートがあるようです。
参考:遺言信託
遺言信託は、死んだときに効力発生(信託銀行のサービス名で通常の遺言と変わらず特別なことができるわけではない) ここで説明した家族信託の仕組みとは異なる
特定贈与信託
- 信託銀行等に金銭等の財産を預け、信託銀行等がその財産を管理する方法。

概要
家族信託でいう甥【受託者】の役割を信託銀行が行うことになります。
個人ではなく組織が管理するため安心度はかなり上がります。
利用にあたっては障害者手帳が必要となります。
知的重度A、精神1級は(特別障害者)、中軽度知的Bおよび精神2級、3級(特別障害者以外の特定障害者)が対象となる。
【委託者】:親
【受託者】:信託銀行
【受益者】:障害のある子
メリット
- 生前に手続きができる
- 個人ではなく信託銀行による信頼と安心がある
- 一定条件で贈与税が非課税
特別障害者は6,000万円が限度
特別障害者以外の特定障害者は3,000万円を限度
デメリット
- 手数料が高い 預入金額の預入時で3.3%と毎年1.5%に手数料が発生する。(率は信託銀行による)
- 非課税枠を超えると贈与税の高い税率がかかる
- 障害者手帳が必要となる
5,000万円預入すると 預入時で165万円、毎年 75万円 子どもが相続後30年生きたとすると、165万+(75万×30年)=2,415万円が概算で掛かります。半分ぐらいを手数料として持っていかれます。
障害者年金が受領できない可能性が高い精神障害3級の方は手数料負担が厳しい。
これは成年後見人制度を利用する場合も似た状況になります。
後見人
成年後見人制度

裁判所から選任された成年後見人が、財産管理、身上監護を行ってくれます。
障害のある方が既に十分な判断能力が備わっていない場合に利用が可能です。
財産管理:収入支出や預貯金の管理、財産管理・処分、相続手続き
身上監護:医療機関の費用や入院手続き、福祉サービスの契約、アパートの賃貸契約などの手続き
本人保護という観点ではしっかりとした制度です。
ただし成年後見人により、親や相続人の望む形がとれないことがあります。
後見人が資産管理者となると生活に必要な最低限の支出に留めてしまうことが多くあるようです。子が死亡する時に多額のお金が残っていて結局国庫に帰属してしまうことが多い。
成年後見人:親族(80%) 弁護士や社会福祉士などの専門家(20%)
※特別に資格がいるわけではない
メリット
- 本人保護という観点では強力な制度
家族すら排除する(デメリットでもある) - 裁判所が選任した後見人が親が死亡した後も継続して財産管理をする
デメリット
- 障害のある子が相続した自宅の不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要
- 財産管理をするに当たっては相続税対策や資産運用等の積極的な処理ができず財産の運用に柔軟性がない
- 子供が死亡した場合に国庫に帰属してお世話になった親族に残余財産を分配できない
- 成年後見人に毎年数十万円手数料が障害のある子が死亡するまで必要で相続財産から支払われる。費用負担が大きくなる。
- 成年後見人自体は福祉というよりあくまで弁護士のビジネスとなる
弁護士等が後見人の場合は高額の費用がかかります。
費用として申し立てのタイミングで、凡そですが医師報酬10万円、弁護士等報酬30万円、管理財産1,000万円~5,000万円で年間40万円~50万円、5,000万円以上で年間60万円~80万円
5,000万円の財産を残して子供が30年生きたとすると
10万+30万+(60万円×30年)=1,840万円
1,000万円の財産を残して子供が30年生きたとすると
10万+30万+(40万円×30年)=1,240万円
金額が低ければ財産分が手数料で消滅してしまいます。障害年金すら消費されるのだろうかと不安になります。逆に高額を預けても余った部分は国庫に帰属する。
任意後見人制度

裁判所から選任となる法定後見人ではなく家庭裁判所は任意後見監督人を選任できる。
この制度により、任意で後見人を選ぶことも可能です。ただし、障害のある子に意思決定能力がある程度ないとそもそも選択不可能です。意思決定能力の判断は家庭裁判所と医師がします。法定後見人に比較して手数料を抑えられることが多いようです。ただし親族による不正な使いこみは2014年に年間56億円以上というデータを見ると二の足を踏みます。
市民後見人

特別な資格を有さない一般市民が後見人を務める場合、市民後見人というようです。
ただし、後見人制度の講習を原則的には受講した人が対象となるため、一定の知識を有しているといえます。問題点としてはやはりあくまで第三者のため、これもまたどこまで信頼できるかという点が課題と言えそうです。

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